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第八十六回渋谷法律相談センターコラム「業務委託契約について」

業務委託契約という言葉を耳にされたことがあると思います。ウェブサイトの制作業務、フードデリバリー業務といった各種業務について、企業が他企業やフリーランスに発注する場合には、業務委託契約が締結されることが大半であるといってよいでしょう。

私たちの身近にあるといっても過言ではない業務委託契約ではありますが、実は、私法の一般法と呼ばれる民法には規定されていない名称の契約になります。我が国の民法では、典型契約と呼ばれる13個の契約について定められており、売買契約(555条以下)や賃貸借契約(601条以下)といった契約についての諸規定が置かれていますが、この中に業務委託契約は入っていないのです。

そうであるからといって、業務委託契約が無効であるというわけではありません。

近代の市民社会においては、市民が自らの意思に基づき権利義務関係・法律関係を形成できるという私的自治の原則があり、そのひとつの現れとして契約自由の原則があります。この契約自由の原則により、公序良俗や法令の強行規定などに反しない限り、どのような内容の契約を締結するかは、当事者の自由であり、当事者の意思に委ねられているのです。

業務委託契約についても、当事者間の合意により有効に成立し、その合意内容に契約当事者が拘束されることになります。

このため、契約当事者にとって、どのような内容で業務委託契約を締結するかが、極めて重要になるといえます。

その上で、当事者間で合意されていないことが問題になる場合などには、当該業務委託契約が民法の中のどの典型契約に近い性質のものであるかを判断し、その典型契約に関する規定を適用して、問題の解決が図られていくことになるのです。

一般に、業務委託契約は、請負契約(632条以下)又は(準)委任契約(643条以下)に相当するものであることが多くなっています。請負契約は、仕事の完成と報酬の支払を本質とするものであり、冒頭のウェブサイト制作業務は、これに該当することが多いといえ、(準)委任契約は、法律行為(又は法律行為でない事務)の委託をすることを本質とするものであり、冒頭のフードデリバリー業務は、準委任契約に該当することが多いといえます。

このため、もし当該業務委託契約で定められていないことが問題となった場合には、それぞれ、請負契約又は準委任契約の規定が適用され、処理されることになっていくのです。

しかしながら、上述のとおり、まずもって当事者間の合意が優先されますから、業務委託契約を締結する際には、慎重に契約書を確認することなどが重要であるといえます。